はじめに
第76回美学会全国大会が2025年10月11日(土)・12日(日)・13(月・祝)に東京藝術大学上野キャンパスで開催されました。美学会で初めて発表する若手研究者のために第65回大会以来、美学会と当番校の共催企画として開かれています「若手研究者フォーラム」も、今年で12回目となります。発表を希望する若手研究者はここ数年増えてきており、今年は所定の人数を大幅に超えたため、厳正な選抜を行いました。発表当日には倍率約1.5 倍の門を潜り抜けた、意欲的かつ新鮮な研究発表が行われました。以下は、それらの発表者の任意による投稿の中から、ある程度の水準に達しているものを論文として掲載した報告集です。「若手」ならではの大胆な視座や、美学という学問領域を現代的文脈において再定位しようとする問題意識が明確に示されています。この報告集が専門的研究に新たな風を吹き込み、これから美学研究に本格的に取り組もうとする次世代の研究者にとって有意義な道標になることを願っています。
美学会「若手研究者フォーラム」委員会
委員長 岩﨑陽子
目次(個別PDFのダウンロード)
タイトルをクリックすると、発表者ごとの「報告論文」(PDF形式)を閲覧できます。
カント『判断力批判』における「演繹論」の意味
―「認識一般」と「客観一般」との関係を手掛かりに―
久保志織
Fr・シュレーゲル「諸流派-論文」における「流派」概念の積極的解釈
橋本悠介
ノヴァーリスの術語「ロマン化」のメディア論的含意
―諸学問思想の帰結としての「書物化」の要請
野村東生
岡本太郎の御嶽への言及における『何もないこと』について
―ハイデガー『形而上学とは何か』を手がかりに―
加来(郭)裕香
感性空間とリズム
―L.-クラーゲスの哲学における現象の構造
今橋勇介
ピントリッキオ作《博士と議論するキリスト》に関する一考察
―書物のモチーフに託された意味の諸相をめぐって―
鳥山倫史
ダニール・セーヘルスの花綱装飾の着想源を探る
―17世紀フランドル花卉画へのイタリアの影響―
泉茂美
J.-M.-W.-ターナー《雨、蒸気、速度——グレート・ウェスタン鉄道》における曖昧性の演出と同時代批評への応答
中山修平
盆栽の「芸術」化を導いた1920-30年代盆栽界の転回
―小林憲雄の盆栽論を手がかりに
横山詢
盆栽のモダニティ
―「絵画的趣味」の受容とピクチャレスク
武井一毅
台湾人美術家による「日本」の戦争美術の再定位
―陳清汾と陳敬輝の事例から
陳昱君
岡上淑子作品における〈層〉
―「着せ替え人形」の観点から
内村麻奈美
エミール・ガレの1889年パリ万国博覧会における不透明ガラス
―鉱物の色調を模倣する関心の現れについて
居椿尚
グスタフ・クリムト《水蛇Ⅱ》
―動植物モチーフから読み解く制作背景
山田耀
ピエール・ボナールのアルカディアをめぐるまなざしと植物
―1910年代の二つの「夏」作品に着目して―
五十嵐実果子
ニーチェ解釈としての「記号の孤独」
―ジョルジョ・デ・キリコと孤独の肯定
大西夏鈴
ロバート・ラウシェンバーグ《ホワイト・ペインティング》における「芸術と生のあいだのギャップ」の問題
―ジョン・ケージ《4分33秒》との比較を中心に
柴山陽生
鎮魂としての芸術
―草間彌生の1970-1980年代コラージュ作品をめぐって
荒木大
ソーシャリー・エンゲイジド・アートの限界
―スザンヌ・レイシーによる《オークランド・プロジェクト》の再検討
富田葉
日本海造型会議の活動に関する考察
―戦後金沢の前衛芸術運動をふまえて
笠間亜理沙
ローレンス・アルマ゠タデマによる後期ヴィクトリア朝演劇の舞台美術
渡邉千華
「報道写真」概念の受容と変化
―名取洋之助の理念と実践を通して
宋釗
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第76回美学会全国大会(2025年10月11-13日 於東京藝術大学)